茫然と立ちつくす達彦に、桜子は只ならぬ雰囲気を感じていた。 「どうしたの?」 達彦は無言で電報を渡した。桜子が目にした1枚の紙切れには、 ‘チチキトクスグカエレ’と、書かれている。 「お父さん、どこか悪いの?」 桜子の問いに、達彦は苛立たしく答えた。 「俺にもわからん。」
桜子とじっくり話す暇も無く、慌しく達彦は岡崎へ帰った。淋しい思いを抱え、達彦を見送る桜子。 数日後、マロニエ荘に冬吾を尋ねて東北訛りの女性がやってきた。眼鏡を掛けたその女性は、大切な約束があると言う。 女性の特徴を聞いた冬吾の表情が一変した。 「俺はここから消える。引っ越した、と伝えてくれ。」 冬吾は急いで荷物をまとめると、マロニエ荘から姿を消した。
岡崎では、拓司の具合をかねと達彦が心配そうに見守っていた。心臓の具合が悪いのだと言う。 いつもは強気のかねが、オロオロしているのを見て、達彦の気持ちは重く沈んでいた。 父親の部屋を離れ、自室に戻ろうとした時、番頭と職人頭の会話を耳に挟んでしまった。「大豆の仕入れ値が高騰しているんですよ。」
達彦はその時、店の経営状態が厳しい、という現実を初めて知った。 そんな達彦にキヨシが「ちょっと…」と呼び止め、連れ出した。
言葉は柔らかいが、険しい顔でキヨシは達彦の今後を問い詰めていた。 「オヤジさんは坊ちゃんに店を継いで欲しい、と思ってるんです。」 達彦の脳裏に先日の父の声が響いていた。 「好きな道を歩め」 いよいよ老舗蔵元の跡取りとしての重圧が、達彦にのしかかってきていた。
「今回は無理でも、達彦君にはいつかまた独逸旅行のチャンスはありますよ。」と 西園寺は言った。 「達彦と、もうずっと話していない・・・どうしてるんだろ。」 西園寺邸でのピアノレッスンが終わった桜子は、電話を借り、山長へ掛けた。 電話口に出たのはかねだった。 桜子と判った途端、つっけんどんな口調のかね。 達彦に取り次いでくれる筈もなく、電話は無造作に切られた。
桜子は岡崎に戻る決意をした。 心配そうに八重が言った「また戻っておいでね」桜子はそんな八重とマリに笑顔で答えた。 「すぐ戻ってきますよ」
不安な気持ちをかき消すかの様に、達彦はピアノを弾いていた。 その時、かねが乱暴に部屋に入ってきた。 「アンタこんな時に・・・バチが当たるよ!」
岡崎に着いた桜子は山長の前にいた。 「達彦さん・・・」心配そうに様子を伺う桜子。と、その時達彦が店から出てきた。 桜子には達彦が、ひどく疲れているように見えた。 励ますつもりで、ピアノや西園寺の話をする桜子。だがしかし達彦には、気持ちの余裕が全く無かった。 「帰ってくれ。俺、今は君と話してる余裕無いんだ。」 桜子の瞳から一筋の涙が頬を伝わり、こぼれ落ちた。◆
オヤジこの状態で何故病院に入れないのだ? そんなヤヴァイ状態で、家に寝かせといてイイのかよと、 ツッコミ入れたくなった。 拓司が重病なのに、家で寝てる理由を考えると…。
1.入院患者が多すぎて、病院のベットに空きが無い。 2.大豆の仕入れに金が掛かりすぎて山長には金が無い為、入院費が捻出できない。 3.病院シーンだと更にセットや役者等が必要になるが、N●Kは受信料収入が減っている為、制作費が捻出できない。
さて真実は如何に。
|