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出征を前に、達彦の一時帰郷が決まった。
かねは、息子の好物である鹿の子寄せの材料を買い込み、桜子はレコードを揃え、ピアノを磨く。

二人が店に戻ると、野木山が電話で誰かと話していた。
「ええっ、本当ですか。それは有難い話で御座います。」

電話を切った野木山はかねに言うのだった。
かねと桜子が営業に訪れた東京の海軍省からで、味噌を試験的に導入したいという。
場合によっては大豆の特配をしてもいい、と。
先日とは随分対応が違うので、不思議に思うかね。

そんなかねに野木山は続けた。
海軍で、潜水艦に積み込んだ味噌が腐る事故が発生した。
その件で、大村少佐が先日の桜子の話を思い出した。八丁味噌は水分が少なく、腐りにくい。

「やったじゃないの!お手柄だわぁ!」大喜びのかねは、桜子の背中をバシバシ叩く。

だが、打合せは明後日。
それは達彦の帰郷の日と重なっていた。一転、顔を曇らせるかね。
「その日は達彦が帰ってくるから行けない。」

そんなかねに桜子が言う。
「アタシが行って来ます。明日発って、明後日の朝一番で打合せをすれば達彦さんにも会える。」という桜子を、かねは済まなそうに見ていた。

そして、達彦帰郷の日。
軍服姿の達彦が、山長の前に立っていた。敬礼し、大きな声で達彦は挨拶をした。
「ただ今、帰りましたっ!」
敬礼する達彦。店の衆が一斉に応対する。
「おかえりなさいませ。」

かねが待ちかねたように、家の奥から出てきた。

「お帰り達彦。アンタの好きな鹿の子寄せ作ったんよ。西瓜も冷してある。それともお風呂入るか。」

矢継ぎ早に語る母に、達彦は言った。
「有森は?こっちで待っておくように、手紙に書いておいた筈だけど?」
かねは黙り込んだ。代わりに答えたのは仙吉だった。
「若女将は、商談で東京に行っております。」

「商談?」
一体どういう事かと、かねを見る達彦。だがかねは、達彦の視線を逸らして俯いていた。

達彦は仙吉と味噌蔵に居た。
仙吉は桜子の奮闘振りを、達彦に語った。
「八丁味噌が作れないと騒ぎになった時、若女将は店の者の事を、必死になって守ってくれました。」

更に、仙吉は大豆の袋を見せた。先日、桜子が自分に言った言葉を語る仙吉。
「これで味噌を仕込み、何が有っても守り抜くように、と。」
達彦は黙って聞いていた。
桜子が、山長の為に必死で頑張っている事を、達彦は理解したのだ。

自室でレコードを聞く達彦。桜子への想いが駆け巡る。

一方、桜子は野木山と共に、海軍省に居た。二人は朝からずっと待たされているのだ。
暫くして、ドアの開く音がした。立ち上がる二人。

だが、それは大村少佐がもう少し遅れる、と、詫びに来た部下の兵士だった。
頭を下げる桜子と野木山。
そして桜子は、じっと黙って座っているのだった。
そんな桜子の様子を心配そうに見る野木山。

達彦はレコードをずっと聞いていた。大の字になった達彦の横には、桜子から貰った帽子が置いてある。
達彦の脳裏に、白い衣装の桜子との連弾風景が甦ってきた。
もっと以前・・・それは東京での、初めての連弾をした時の想い出までもが達彦の胸を締めつける。
音楽学校に通っていた時、桜子から貰った帽子。
それは、桜子が自分に対して、初めて好意を示した瞬間だったのだ。
達彦はたまらず、帽子で顔を覆った。

そして桜子もまた、達彦への想いが心を熱くしていた。
入営前の夜、ふたりで楽しんだ線香花火。
月明かり、初めてのキス。

(つづく)

テーマ:純情きらり - ジャンル:テレビ・ラジオ



















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