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【ちりとてちん「大草若の小さな家」#145】

皆から貰った志を前に、草原が言った。
これで常打ち小屋が建つ訳ではないけど、有難い事だ。何年掛かっても絶対に建てよう。
草原の言葉に喜代美は頷く。
ずっと何かを思いつめていたのか、小草若が口を開いた。
「俺・・・売るわ。」
この家を売れば、もう少し土地の安い処に、小屋を建てる位の金は出来るだろうと言う小草若に、草々が驚く。
「オマエ何を言うてんねん。」

小草若なりに、父と母の想いを考えていた。草若が何故、そこまで常打ち小屋にこだわっていたのか、志保も同じ思いでいたのか。
落語が出来る場所を、残そうとしていた・・・自分だけでなく、草原や草々、四草、若狭・・・会った事の無い小草々達、次世代の落語家の為に。
目を潤ませていた四草、言葉を詰まらせながら小草若に言う。
「思い出の、いっぱい詰まったこの家、売る事なんか出来んのですか?」
気持ちを絞り出す様に言うのが精一杯の四草に、小草若は大きな声で言う。
「出来へんよ。出来へんけど・・・。」そうしなきゃいけない、声の大きさは、自分に言い聞かせる為なのだろうか、小草若の頬に幾筋の涙が伝う。
「それが、師匠の・・・親父の願いやねんから。」

兄弟子達の話を聞いていた喜代美が、ある提案をした。

最後に、この家で落語会やりませんか?

師匠の思い出が一杯詰まったこの家で、師匠に見守られて、落語がしたい。
喜代美の言葉に、それぞれが目を潤ませていた。

季節は秋になった。
和田家の工房では、清海が自分の作っている箸を見つめていた。石を模様にした清海の塗箸、今から磨ぎの工程に入るのだ。
磨石を握り、清海は静かに箸と向き合う。

草若邸では、落語会の準備に追われていた。慌しく準備する喜代美達の所に、陽気な声で挨拶しながら入ってきたのは尊建だ。その後ろから「お邪魔します~」と入ってきたのは柳眉。
「聴きに来たったでぇ~。草若邸お別れ落語会。」
話をしていなかったのに、何故知っているのか?訝しがる喜代美に、笑顔で答える尊建。
「メチャメチャ噂になってんで。」
柳眉が続けた。
「家を売ってまで常打ち小屋を建てるなんて、相変わらず無茶しますな、徒然亭は。」
その言葉に笑顔で答える喜代美達。
そんな間もなく、「おはようさん~」と入ってきたのは柳宝と尊徳。次から次へとやってくる大物先輩や大御所に、興奮しっ放しの勇助。

喜代美達は来客の準備に更に追われる。思いがけず多くの人がやってきた。席が足りない。菊江の処から座布団を借りても未だ足りないのだ。
草原と座布団の数で話していたら、尊徳が声を上げた。
「漢五郎はん~」
付き添いに沿われて、漢五郎師匠までやってきたのだ。勇助はすっかり、声を上ずらせていた。
もう完全に座布団だけでは間に合わない。寝床から椅子を借り、庭先に次々と並べられていく。
準備は着々と進んでいた。

工房の清海は箸を磨ぐ。気持ちを集中させ、丹念に研ぎ続ける。

草若邸を訪れた客。思いもかけず沢山来た為に居間では収まりきれず、庭に席を作る事になってしまった。
予想外の出来事にびっくりする小草若に、草々が笑顔で言う。
「そんだけ、草若師匠が慕われていたと言う事や。」
稽古場で、自分達の身支度をする徒然亭一門。

庭先に座った来客達。柳宝が尊徳に話しかける。
昔、その辺の辻で落語をやっていた頃を思い出す。柳宝の言葉に、尊徳も若い頃を思い出す。青空の下でやっていた落語、そんな昔を思い起こさせるような青空の下で聴く、今日の落語。
漢五郎も思いは一緒だった。

草若の写真に向かって頭を下げる勇助。高座に向かう表情は、明らかに緊張の色が伺える。高座の小草々を、暖簾の向こうで見守る草々、喜代美。
高座で緊張気味の小草々、何事?という表情の客。

小草々の額に掛かった髪を、秋のさわやかな風が吹き抜ける。
風と共に、すっと気持ちを落ち着かせた小草々が噺を始めた。

小草々の噺が続いている中、喜代美は草若の写真に深々と礼をする。
若狭の落語は創作落語。自分と草若との出会いを噺のネタに、客席の笑いを取る若狭。
落語会は続く。
そして小浜、和田家の工房では清海が一心に箸を磨ぐ。
模様が少しずつ見えてきている箸。悩んだ事も、落ち込んだ事も、嬉しかった事も・・・清海の箸の模様になって、少しずつ浮かび上がる。
工房の入り口ではいつしか、正典が清海の様子を黙って見守っていた。

四草の落語は「算段の平兵衛」。今やすっかり、四草の十八番になっている。
解放された空間えでの落語会に、心地いい気分になる。
それは演者も、観客も同様だった。

小草若は「はてなの茶碗」。今迄本当に、一生懸命稽古したから、小草若の落語も綺麗な模様になって浮き出ている。
「底抜けの~茶碗かいな~」と、十八番のフレーズも忘れない。笑い転げる尊建が言う。
「どんな茶金さんやねん。」
草々は「辻占茶屋」。喜代美と草々にとって、特別の落語となった落語だ。
そして草原は「愛宕山」。草原の噺に、草若の声が被る。草若師匠もこの場に居る。
草若の声と草原の声が被る。
いつしか客は、庭一杯に増え、入りきれない客が門の外から中を覗いている。
落語が皆を笑わせている。

尊建が草々に言った。
「この後、俺も出ていいか?」
尊建の申し出に驚く草々。青空の下での落語会は、思いがけない方向へと進む。
自分達も高座に上がりたいと言い出したのは、尊建、柳眉だけではなかった。
尊徳や柳宝達も高座に上がる。
空が見える。解放された気持ちの良さを、自らも高座で味わいたくなったのだ。
大勢の人達が落語で笑う場所となった草若邸。
鞍馬も、その様子をじっと見ていた。

夕陽が差し込む工房で、清海は箸を見つめた。
磨ぎ終わった箸に浮かぶ模様。その綺麗な模様に、清海の表情が嬉しさでいっぱいになった。
静かに泣く清海の頬を、次から次に涙が溢れる。

草若邸では落語が続く。終わらない落語会に、苦笑しながら小草若が言う。
「これ、いつまで続くの?」
喜代美は笑顔で言う。
「何か、草若師匠が惜しんどるみたいですね。このお家とお別れするのを。」

突然、鞍馬が現れた。緊張の面持ちで、鞍馬の前を向いた一同。
鞍馬は言う。

「出来たやないか。誰でも気軽に入れて、噺家が腕競う、常打ち小屋や。」
鞍馬が喜代美達を見る。そして喜代美達は鞍馬を見る。
今、鞍馬が本気で、本心で話をしている。

草若の写真に向かい、語りかける鞍馬。それは草若に語りかけるかの様でもあった。
「ワシに頼らんでも、出来たやないか。」
鞍馬は喜代美達、徒然亭一門の姿を見る。

「この時を、待っていたんや。」

鞍馬は微笑を残し、部屋を出て行く。次々と頭を下げる一同。
草若の「愛宕山」が何処からともなく聞こえてくる。
終わらない落語会、いつまでも続く笑い・・・。

鞍馬は何年待ったのだろう。悪態つきながらも、芸人を鍛えつつ、ずっと待っていたのか。自分達の力で、笑いが溢れる空間を今、徒然亭が生み出している。
それを見た鞍馬会長、本当に嬉しそうだった。

そして清海の箸。
長い時を経て、清海の人生の模様が鮮やかに浮かぶ塗箸。
子供の頃、遠足で拾った石は、高校時代に喜代美と交換して、一旦はその手を離れた。
何度も自分の手から離れた石だった。
でも清海の元に戻ってきたその石を砕き、清海は箸の模様にした。
自分のお守りだった石が煌く塗箸。
それを見つめる清海は、これからの自分の道を、誇りを持って歩いていけるのではないのだろうか。
黙って嬉し涙を流す清海を見守る、正典と糸子の温かさが心地良かった。
清海の人生に、もう迷いは無いのだろう。キラキラと輝く箸と、これからの清海の未来が重なって見えた。
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テーマ:ちりとてちん - ジャンル:テレビ・ラジオ



















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