技術なら遥かに達彦の方が上だった。でも桜子は、達彦でさえも敵わない聴力を持っていた。
即興で弾いた西園寺の曲を、たった1回聴いただけで再現し、更にアレンジも加える事が出来る。
学生だった時分に見た、桜子の能力。あれを見せられて、達彦も桜子の「本当の力」を知ったのだ。
恐らく今でも、技術なら達彦が上だと思う。
でも、磨けば必ず光る宝石だと知っているから、達彦は桜子の音楽への道を開こうとするのだろう。
亨は目の所為で、内向的な子供になっていた。
「見えなくなるのかな・・・。」と、しょんぼりする亨が、まるで本当に其処に存在するみたいで・・・TVを見てる自分の目が、不覚にも潤んでしまった。
道端の桔梗を手に取り、亨に持たせる桜子。
「花の感触を覚えておけば、瞼を閉じていても見えるんだよ。」と亨に語る。
代用教員時代もそうだったが、子供と居る時の桜子は穏やかで、優しいお姉さんだ。
外で遊びたい盛りなのに、見えないから外に行っちゃダメって言われるのは、ツライだろうな。
姉達はあや取りに夢中で、自分に構ってくれないしね。
桜子の処に、一人で行こうとする亨。
犬に吠えられて逃げ出した亨に、遥か彼方の幼少期を思い出してしまったよ・・・。
それにしても亨ちゃん、カワイイなぁ。ほんと子役の子って、皆かわいい~。