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かねは職人達を大広間に集めた。
店を守る為に取った女将の決断。
味噌を薄め、品質を落として売らざるを得ない事を、皆の前で語った。

仙吉は言った。
「今月いっぱいで、店を辞めさせてもらいます。」
その言葉に、かねはただ、黙って頷くだけだった。

仙吉はひとり、自分の手をじっと眺めていた。何年も味噌作りに費やした自分の手。
黙って座っている仙吉に、徳治郎は言った。
朝の来ない夜は無い。今はこんな時代でも、いつかまた、本物の味噌を作れる時が必ず来る。
その時、仙吉の力がまた必要になるのは判っていた。
だが彼は、"今を生きる為の妥協"を受け入れる事が出来なかった。

その頃、山長に人相の悪い男達が押し掛けていた。
桜子が応対すると、派手に殴られたキヨシを突き出す。

先日の安い大豆、手付金だけで、全部の金額が未払いだと男達は凄んだ。
その時だった。
奥からかねが出てきて言った。

「荷が有れば、代金を払う。」と。

キヨシが掴まされた大豆とは、脱脂大豆だった。
野木山は激怒した。「こんなもん、飼料にしかならん。」
仙吉はキヨシに言った。「お前はクビだ。」
キヨシはただ、うなだれるばかりだった。

キヨシが去った後、桜子はかねや仙吉達に言うのだった。黙っていられなかった。
「赤紙が来ているんです、キヨシ君。」
その言葉を聞いて、不機嫌な表情のかねに、僅かな感情が走った。

ひぐらしの声が聞こえる。
かねは桜子に言うのだった。
「馴染みのお客さんたちに、本当の事、言わなきゃ。」
かねは八丁味噌が作れない事を、新聞広告に載せると言う。
かねもまた、店を愛し、味噌作りを愛していたのだった。
そんなかねに、桜子は言った。
「達彦さんが帰ってくるまで、女将さんがこの店の要なんです。」
桜子の言葉に、沈み込んでいたかねの気持ちが、少しだけ明るくなるのだった。

翌日、脱脂大豆の用途を思案するかねや仙吉達に、キヨシが別れの挨拶に来た。
入営を告げ、大豆の件で深々と頭を下げるキヨシ。
かねは許した。だが、仙吉の表情は険しかった。

その時だった。
「脱脂大豆で味噌を仕込んでみてはどうか?」と桜子が言い出した。
仙吉はすかさず返した。「そんなものは味噌じゃない。」
だが桜子は動じなかった。

確かに八丁味噌とは呼べない。でも味噌は味噌だ。
安い材料で美味しいものを作るのが料理の基本ではないのか。
あるもので何とかする、というのも面白いではないか。

その言葉に、かねもやる気になった。
そして、キヨシもまた、最後の味噌作りに参加したいと申し出るのだった。

「八丁味噌製造中止」新聞広告を眺め、溜息をつくかね。
その時、野木山が駆け込んできた。「店の前に行列が・・・!」
驚くかねと桜子。慌てて表に出ると、そこには、最後の八丁味噌を手に入れようと並ぶ客の列が出来ていたのだった。



でさ~、こんな時代が変わった暁には、じいちゃんは青汁売りに(略)
桜子はいいリーダーになれるかもしれないね。
周りが見えるようになった、って事は、成長してきたんだね。
常に新しい発想が出てくるし、前向きだ。

そして、かねと桜子。徐々に気持ちが繋がってきているのが判る。
この二人が組んだら、色んな意味で最強かもしれない。

達彦は確実に、尻に敷かれそうだが(笑)


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