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平穏な時代なら、かねは恐らく桜子との結婚を一生許さなかっただろう。だが皮肉にも、達彦に来た赤紙が、かねの心を揺るがせるきっかけとなった。
達彦の桜子への深い愛情を目の当たりにし、更に、桜子が達彦への想いを込めて千人針の為に、街頭に立つ姿を見てしまった。
家柄の差とか、ずっと昔から積もりに積もった桜子への不満とか・・・かねの心を、夏の雨が少しずつ洗い流す。
名家のお嬢さん育ちだって、母となった今、子供を持つ親心には、他の親と何ら変わる処などない。

無心にピアノを弾く達彦。その姿を見たかねは、マルセイユでの演奏会で、音楽学校受験を許した時の事を思い出していた。
「あんたはホントにピアノが好きなんだねぇ。」かねは涙ぐむ。
「こんな事なら、もっと好きな事をさせてあげればよかった。」
かねの心は、息子に"一番やりたい事"を満足にさせてあげられなかった後悔でいっぱいだった。
だが達彦の言葉は、母への感謝に満ち溢れていた。
「やらせてくれたじゃないか。半年足らずだったけど、本当に楽しかった。」
達彦の笑顔に、かねは涙目になっていた。
「楽しかったか?」と問うかねに、「夢の様だった。」と息子は答えた。

坊ちゃん、ホントいい息子だよな・・・。母は自慢の息子だったんだろう。
なのに戦争が、親子を引き裂こうとしている。
めでたくも何ともないのに、おめでとう、と言わなければ非国民扱いされる不遇な時代。本音を語ればどんな目に会うかわからない、そんな厳しい時代に、母が息子にしてあげられるたったひとつの事とは・・・。

かねは神社へ向かった。桜子を探しに。
激しい雨に、人っ子ひとり居ない神社。ふと、軒下にじっと立つ桜子を見つけた。

桜子の目の前に立つかね。
意を決した表情で、じっと立っている。
「女将さん・・・。」桜子の言葉に、かねが切り出した。
「達彦と、一緒になっておくれ。」と。

かねにしてみれば、先日散々悪態をついた有森家の敷居をまたぐなんて思いもよらなかっただろう。でも、息子の事を思えば、母は強し、である。
どんな恥ずかしい、情けない思いだって、出征する息子の事を思えば、今のかねにとっては大した事ではない。
かねは頭を下げた。「桜子さんを達彦の嫁に下さい。」と。
だが、笛子や徳治郎にしてみれば、"ムシが良すぎる話"にしか聞こえない。

散々、言いたいことを言っておいて、今更何を言ってるんだ。

笛子達には、出征すると判った途端、手のひらを返したような態度に見えたのだろう。
かねは自分の非礼を深く詫びた。
そして、息子への思いを悲痛な思いで語るのだった。
「好きな娘を女房にしたら、何が何でも生きて帰ってこようと思うかもしれない。私はそれに賭けたい。」

それを聞いて、いつもなら真っ先に反論する磯が、しんみりと言った。
「かねさん、あんたいい母親だね。」かねの目から涙がこぼれた。
磯にも子供が居るから、母親の心情は痛いほどに判る。
「でも、こういう事は本人の意思を聞かなくては。」

だが桜子の意思は決まっていた。

山長に、達彦の為の千人針を届けにいった桜子は、達彦に会いたい旨を伝えたものの、かねはすまなそうに言った。

「あんたには会えん、って。本当に頑固なんだから。」詫びるかね。

そりゃ、あなたの息子だもん。頑固なのはしょうがないよ、って思ったのアタシだけ?

桜子は「ご武運をお祈りいたします」と伝言を残した。

達彦の入営が迫っていた。あれから会えないままの桜子に、姉ふたりは気にかけるものの、桜子本人は、会えなくても、自分の気持ちは通じた筈と信じていた。
その時だ。
有森家の前に大きな荷物が届いた。一体何事かと訝しがる有森家の人々。
荷物の封が解かれた。
「これは・・・お父さんの残してくれたピアノ。」

以前売った筈のピアノだった。
ピアノと共に、達彦からの手紙が添えられていた。急いで封を切り、読む桜子。
そこには、達彦の、桜子への深い愛情が綴られていたのだった。

遠い戦地に居ても、君がピアノを弾いている、そう思うことが自分の支えになる。

桜子の目から涙がこぼれ落ちた。

笛子は達彦に会いに、山長へ行った。
どうしても、入営前に二人を会わせたい、そんな思いだったのか。
ピアノのお礼と、入営前に有森家で桜子の演奏会を開きたいので、来て欲しいと
達彦に伝える笛子。

入営を2日後に控えたある日、達彦は有森家を訪れる。
皆が正装している姿に、一体何が・・・。

そして桜子。
真っ白なワンピースに花の髪飾りをつけ、花嫁を思わせるいでたちで、達彦を迎えるのだった。


さて、今日のツッコミ。
ピアノはマスター・ヒロに探し当ててもらった、と達彦の手紙に書かれてたけど、あのマスターは、只の喫茶店のオヤジじゃないのか?
一体何者なんだ??
何か、そういうネットワークでもあるのだろうか・・・。侮れないオヤジだ。

かねの声を聞くと、達彦よりかねの方が軍隊で使えそうな気がしてね。
いや、だって連邦軍の中尉さんだった経験も(略)
帝国軍の補給部隊なんかどうでしょう、とヨコシマな視線で、今朝は観てた。


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テーマ:純情きらり - ジャンル:テレビ・ラジオ



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