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冬吾はヤスジに対して腹を立てていた訳ではなかった。
ぶっきらぼうな冬吾だが、彼なりにヤスジを心配していたのだ。
好きでもない内容の絵を描き続ける事に対して、果たして彼が耐えられるのか案じていた。
描くのが好き、なだけでは務まらない。ヤスジの性格上、そんな仕事は向いていないのでは…。
冬吾の真意に桜子は、好きでもない軍歌の作曲に苦しむ西園寺の姿がオーバーラップしていた。
「先生、大丈夫かな。」

再び軍歌を作曲した西園寺。だが、軍人達を前にいざ演奏をしようと、
ピアノを前にしても、手が震え、演奏不可能になっていたのだ。
窮地を救ったのは駆けつけた秋山だった。彼は西園寺から楽譜を受け取ると、
軍人達の前で見事に演奏をしてみせた。

絵、音楽、小説…表現する事を生業とする人々にとって、今は冬の時代だ、と
冬吾は言った。
じっと息を潜め、嵐が通り過ぎるのを待つだけ。
だが実際は、嵐はますます酷くなるばかりだった。
「ヤスジさんの壮行会、してあげましょうよ。」桜子は提案した。

マロニエ荘に皆が集まった。ヤスジに言葉を掛ける冬吾。二人は穏やかな表情だった。
遅れてきた薫子と編集部の若槻が、ヤスジに花束を渡した。
ハツ美は若槻の顔に釘付け状態。達彦に失恋し、意気消沈していたハツ美だったが、
若槻の顔を見た途端、みるみる生気が戻った。

西園寺がパーティの余興に演奏を始めようとしたその時、秋山が現れた。
昔の非礼を詫びる秋山を、西園寺は優しく迎え入れた。
皆が揃った処で演奏が再開された。
「踊りませんか?」と若槻に声を掛けられ、ビックリするハツ美。次々と踊りの輪が出来た。
その光景を楽しそうに、でもぎこちなく眺める達彦と桜子。薫子は二人の関係に気付いていた。
「踊ったら?」顔を見合わせる達彦と桜子の手を取り、薫子は、そっと重ね合わせた。
楽しそうに踊る桜子達を眺める薫子に、スッと手を差し出す一人の男。
西園寺の助手、松尾だった。
幸せなひとときだった。皆、笑顔がこぼれていた。

数日後、一通の電報が達彦の下に届いた。
それを手にした放心状態の達彦。

「どうしたの?」
桜子は、夏の嵐が来る事をまだ知らない。



パーティで呑んでた酒の色が、どうしてもワインに見えません(笑)
あの色はカンパリだと密かに思うワタクシでございます。

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テーマ:純情きらり - ジャンル:テレビ・ラジオ



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